夏服
ただ憧ればかりの 年上のあなたは
長かった髪を切り 清楚な夏服を着て来た
今迄は どちらかと言うと
少し派手目の印象が深かったけれど
またその姿にも胸が高鳴った
どうして急に…誰もが思っただろう
家庭の事情で 彼女は遠くへ引っ越すという
僕たちの…いや…僕の憧れが…
彼女に何も言えずに…
お別れするのか?それとも…
取り敢えず 残された時間は僅か…散々迷い
彼女にいらぬ気遣いをさせぬ様
何も言わない事を決心しお別れした
あれから…10年…と余り…
何度となく 街角で似た人を見かけた
或る日 声をかけて見ると それは彼女だった…
地元の先輩の所に嫁いで来たという
僕は 告白したかった気持ちを
少し照れながら話した…すると彼女も
頷きながら…あの時は僕の事が好きだったと…
だけどもう…
彼女の左手の薬指には指輪が光っていた
優しい初夏の始まり
懐かしくほろ苦い風が吹いていた
じゃあって…短い別れ言葉で…
二度と逢えない気持ちとお別れした…
夏服が爽やかな 風にそよいでいた…