ポッケカイロ.

ポッケカイロ

ポッケカイロ

部活が終わり 君達と帰る 冬の帰り道
セッカチな日暮れに もう星が出ている

待ち合わせの約束をしていたわけでも無く
男女交じりの 偶然のグループ下校

あまり話した事も無く 照れ屋の私には
そんなきっかけも 無いままで …

憧れていたあなたも居たから 余計に楽しくて
みんな離れがたくて 遠回りしたね…

藍色の夜闇に 時たまライトに照らされて
儚くて艶やかな 街路樹の姿が見えていた

あなたが唇に指でシーって言いながら
手渡された ポッケカイロ とても温かくて幸せだった

あの時あなたは …
私のこの気持ちを知っていたのでしょうか?

そして私は…
告白出来ずに 片想いのまま 貰った第二ボタン…

ひと肌恋しい 冬の始まり もう一度 温まりたいなぁ…

あなたがくれた…使いかけのポッケカイロ…

 

 

ポッケカイロとは、貼れないカイロで学生時代、貼るカイロが、出回る前には、ただの貼れないカイロしかなかった様な気がする。…取り敢えずなかった…ので…まぁいい事にして、部活が終わると、着替えとかなんだかんだで、みんな同じくらいの帰り時間になり、冬は暗くなった通学路をワイワイガヤガヤ話しながら、ある者は、ふざけながら、ある者は、心に咲き始めようとする思いの内緒の蕾を胸に一緒に帰る楽しいひと時…少し寒空に、最後の紅葉が、クルマのライトに、時折照らされその樹々の上を見上げれば、夜闇に薄く冷たそうな雲が月にかっては、流れてゆく ひと息深呼吸をすると、冬支度した自然界の匂い、その少し切ない空の下、憧れてたあなたが、学生服のポケットから、みんなに見つからない様に、自分が使いかけていた、カイロをくれた…それが、彼女の気持ちに気付いていたのか、いなかったのかは、定かでは無い。ただ告白出来ないままで。手に入れた、第二ボタンは宝箱の中に仕舞っていた。その使いかけのカイロは、何時までも彼女の心を温めていた…



 

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